田幸和歌子

尾崎紅葉の『金色夜叉』――作者名と作品名、「貫一・お宮」の名前などは知っているという人が多いだろう。 また、熱海の海岸で貫一が宮を蹴り倒す場面、「来年の今月今夜になったならば、僕の涙で必ず月は曇らして見せるから」という名ゼリフも、テレビやマンガなどのパロディで知っているという人も多いかもしれない。 だが、作品を全編通して読んだことのある人は、かなり少ないと思う。